
「木造で高層ビルなんて、火事や地震は大丈夫なの?」 そんな疑問に対する2026年現在の明確な答えが、**「マスティンバー(Mass Timber)」**です。
マスティンバーとは、単なる「大きな木材」ではありません。高度な工学技術によって、コンクリートや鉄骨に匹敵する強度を持たされた**「エンジニアード・ウッド(工学木材)」**の総称です。
今回は、その代表格である「CLT」と「グルラム」の違いと、それぞれの凄さについて分かりやすく紐解きます。
目次
1. CLT(直交集成板):木で作る「巨大な壁と床」
CLT(Cross Laminated Timber)を一言で表すなら、「木のコンクリートパネル」です。
- 構造: 木の板を、層ごとに方向が直交(90度)するように交互に重ねて接着したもの。
- ここが凄い: 交互に重ねることで、木特有の「乾燥による反りや収縮」を互いに打ち消し合い、極めて高い寸法安定性と強度を発揮します。
- 建築での役割: 主に「壁」や「床」に使われます。パネルとして工場で製造し、現場でプラモデルのように組み立てるため、工期が驚くほど短縮されます。
2. グルラム(集成材):自由な形を創る「木の骨格」
グルラム(Glued Laminated Timber)は、日本語で「集成材」と呼ばれ、古くから親しまれてきた技術ですが、現代のそれは進化しています。
- 構造: 木の板を、繊維方向に平行に並べて接着したもの。
- ここが凄い: CLTと異なり、繊維を揃えることで「特定の方向への強度」を最大化できます。また、製造過程で自由に曲げることができるため、美しいアーチ状の梁(はり)を作ることが可能です。
- 建築での役割: 主に「柱」や「梁」に使われます。巨大なアリーナの屋根や、高層ビルの強靭な骨組みを支える、いわば建築の「骨格」です。
なぜ、これらが「高層ビル」を可能にするのか?
「マスティンバー」がコンクリートに勝る、3つの決定的な理由があります。
- 驚異の軽さ: 強度は保ちつつ、重さはコンクリートの約4分の1。これにより、地盤改良コストを大幅に抑えられます。
- 炭素を閉じ込める: 鉄やコンクリートは製造時に大量のCO2を排出しますが、木は成長過程で吸収したCO2を建物の中に「貯蔵」し続けます。
- 火に強い(燃え止まり): 「厚みのある木」は火がついても表面が炭化するだけで、中心部まで火が通りません。この「炭化層」が天然の断熱材となり、構造の崩壊を防ぐのです。
まとめ:材料を知れば、景色が変わる
CLTが「面」を作り、グルラムが「線」を創る。 この2つのマスティンバーをAIが最適に配置し、5軸加工機が精密に削り出すことで、私たちが夢見た「木の都市」が現実のものとなっています。
現在発行中の noteマガジン『phity 🌲 都市を森に』第4号 では、これらを使ったロンドンや北欧の驚愕の最新事例をレポートしています。 材料の知識を深めた今、ぜひ「世界の最前線」を覗いてみてください。
