【技術レポート】大分モデルにおけるCLT実装と建築経済性の分析
大分県が誇るCLT製造基盤と、それを活用した「木造建築2.0」の標準的なスペックを技術的視点から解剖します。

目次
大分モデルにおけるCLTの構造解析データ
大分県産スギを用いたCLTパネルの、標準的な設計値を整理します。
- 標準強度基準(スギ等級):
- 大分県産スギを用いたCLTパネルは、一般的に「Mx60(縦横異樹種・異等級構成)」が主流。
- 基準強度(Fb): 20.4 N/mm² 程度の設計値を確保し、中規模建築の床・壁材として十分な剛性を発揮。
- パネルスペック:
- 最大サイズ: 3,000mm × 12,000mm 級の超大型パネルの供給が可能。
- 遮音・耐火性能: 150mm厚以上のパネルにより、共同住宅における界壁の遮音性能(TL値)および1時間耐火構造の認定取得が容易。
RCハイブリッド構造のコストシミュレーション(比較表)
延床面積1,000㎡程度のオフィスビルを想定した、構造別の概算比較です。
| 項目 | 純RC造(従来型) | 木質ハイブリッド(大分モデル) | 備考 |
| 構造躯体費 | 100(基準) | 115〜125 | CLT部材費が加算される |
| 基礎・杭工事費 | 100 | 80〜85 | 木材の軽量性により約20%削減 |
| 工期(建方) | 100 | 60〜70 | 大判パネル化による圧倒的短縮 |
| 環境価値(炭素固定量) | 低 | 極めて高い | ESG投資・補助金対象 |
| 総合コスト | 100 | 105〜110 | 工期短縮と地盤改良費抑制で相殺 |
- ハイブリッドの利点: 上部構造の軽量化により、大分のような火山灰層(地盤が軟弱な地域)においても地盤改良コストを大幅に抑制可能です。
プレカットから現場施工までのデジタル・ワークフロー
大分の高度加工拠点を中心とした、BIM(Building Information Modeling)連携の流れをステップで示します。
- Step 1: BIM設計(LOD300以上)
- 意匠設計段階からCLTの割り付けを確定。金物干渉をデジタル上で完全排除。
- Step 2: CAD/CAMデータ転送
- 設計データを直接、大分県内のCLT工場へ転送。人間による転記ミスをゼロ化。
- Step 3: 高精度プレカット(CNC加工)
- 0.5mm単位の精度でパネルを加工。現場での調整(削り)作業を不要にする。
- Step 4: プレ組立て・ジャストインタイム配送
- 現場の工程に合わせ、施工順序通りにトラックへ積み込み。
- Step 5: クレーンによる高速建方
- 1日あたりの施工面積はRC造の約3倍。現場作業員の人件費抑制に直結。
【ハイブリッド考察:エンジニアの視点】
大分モデルの真髄は、「素材の良さ」を「情報の正確さ(デジタルデータ)」で包み込んでいる点にあります。BIMデータがそのまま工場のロボットを動かし、現場でパズルのように組み上がる。この「設計・製造・施工の同期」こそが、木造建築2.0を支える真のOSと言えるでしょう。
執筆協力:phity.net 技術編集部
関連タグ:#CLT #木造建築2.0 #BIM #大分県 #構造解析
