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菊竹清訓のメタボリズム思想とAI設計——CLT木造建築が「変化する建築」を実現する理由


メタボリズムとは何か:建築史における位置づけ

メタボリズム(Metabolism)は、1960年の世界デザイン会議で日本の若手建築家グループが発表した建築思想です。「新陳代謝」を意味するこの言葉が示すように、都市や建築を固定した構造物ではなく、生物のように更新・成長するシステムとして捉えることを提唱しました。

菊竹清訓(1928–2011)はその中心人物の一人で、「海上都市」「塔状都市」「スカイハウス増築実験」など、交換可能なユニット・モジュールを前提とした建築プロジェクトを発表しました。

当時のメタボリズムは、思想の先進性に対して建設技術と材料コストが追いつかず、大規模な社会実装には至りませんでした。しかし現在、AIとCLT(直交集成板)を中心とするエンジニアリングウッドの発展によって、この思想が技術的に実装可能な段階に近づきつつあります。


菊竹の「か・かた・かたち」:パラメトリックデザインとの一致

菊竹の設計論の核心は「か・かた・かたち」という3層構造です。

「か(価値)」は建築の目的・理念を、「かた(システム)」は構造・ルール・生産方式を、「かたち(形態)」は最終的な物理形状を指します。菊竹はこの順序を厳格に守り、「形から設計するな」という原則を繰り返し説きました。

この設計思想は、現在のパラメトリックデザインおよびジェネレーティブデザインと構造的に一致しています。パラメトリックデザインでは、まず変数とルール(かた)を定義し、そこから形(かたち)を生成します。菊竹の論理は、コンピュータなき時代に、現代のアルゴリズミック設計と同じ思考の順序を提唱していたと言えます。


AI研究との接続:Novelty Searchと「進化する建築」

現在の設計AI研究において注目される「Novelty Search(新奇性探索)」は、OpenAIのケネス・スタンリーが提唱したアプローチです。特定の最適解を目指すのではなく、「これまでにない新奇な解」を探索することを目的とし、ダーウィン的な進化プロセスをシミュレーションします。

菊竹が提唱した「変化のプロセスを設計する」建築哲学は、この手法と思想的に接続しています。あらかじめ決められた完成形を追うのではなく、環境変化に応じて自律的に適応・進化する建築——その理念を計算的に実装する可能性が、Novelty Searchによって開かれつつあります。


CLT木造とDfMAが実現する「交換可能な建築」

メタボリズムが当時実現できなかった「部位の交換可能性」は、現在のCLT木造とDfMAの組み合わせによって現実的な実装が近づいています。

DfMA(Design for Manufacture and Assembly)は、設計段階から製造・組立・解体のプロセスを考慮する設計方法論です。CLTパネルの規格化・モジュール化と組み合わせることで、以下のような特性を持つ建築が設計可能になります。

工場での精度の高い生産によってコストと品質のばらつきを抑えられること、パネル単位での部分的な交換・更新が設計上可能であること、解体時の材料回収率が向上し循環利用につながること——これらは木造特有の素材特性とDfMAの論理が重なった成果です。

菊竹のメタボリズムが構想した「更新し続ける建築」は、CLT×DfMAという組み合わせにおいて、最も技術的な説得力を持ちます。


まとめ:思想の実装期に入った木造建築

菊竹清訓のメタボリズム思想は、発表から60年以上を経て、AI・CLT・DfMAという三つの技術的文脈と交差しつつあります。設計AIが「変化のルール」を自律的に探索し、DfMAがその実装プロセスを整え、CLT木造が物理的に担う——この三者の連携が、次世代の木造建築の核心になる可能性があります。

この領域について、より深い考察と事例分析をSubstackで発信しています。建築技術者として木造・CLT・ハイブリッド構造に取り組んでいる方に向けた内容です。

→ 木造建築2.0 深層考察 on Substack(phitouc.substack.com)

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