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CLTの再利用(リユース)はなぜ難しいのか──サーキュラー化を実現する4つの設計戦略


はじめに

CLT(Cross-Laminated Timber)は、脱炭素化を進める都市開発において、有力な選択肢として注目を集めている。

ただし、実務者として見落としてはならない論点がある。「解体後、そのCLTはどうなるのか」という問いだ。

現状の多くのCLT建築は、ビスや接着剤による湿式・恒久的な接合が前提となっており、解体時には部材を破壊せざるを得ない。結果として、固定されていた炭素が大気中に放出され、再利用も困難になる。

本稿では、CLTを「消費材」から「循環する建材プラットフォーム」へ転換するための、4つの実装戦略を整理する。


CLT再利用を阻む3つのボトルネック

再利用を妨げる要因は、主に次の3点に整理できる。

  • 接合部の破壊: ドリフトピンや長ビスによる接合は、引き抜く際に木材繊維を損傷し、構造耐力を低下させる
  • 特注寸法の制約: プロジェクトごとの特注カットにより、他案件への転用が困難
  • 履歴データの欠落: 使用年数・荷重履歴・含水率推移などの記録がなく、再利用時の構造計算に組み込めない

これらの課題に対応するには、設計の初期段階から「解体されること」を前提とする**DfD(Design for Disassembly:解体容易性設計)**の考え方を組み込む必要がある。


4つの実装戦略

① 構造:乾式接合(ドライジョイント)とハイブリッド金物

木と木を直接接合するのではなく、「木と鉄」のハイブリッド接合へ移行する。具体的には、現場での接着剤・釘打ちを避け、地域の鉄工所が製作したスチール製コネクターを介してボルト締結する方式だ。

柱・大梁をS造(鉄骨造)とし、床や耐震壁としてCLTパネルを組み込む混構造も有効な選択肢となる。解体時はボルトを外すだけで、パネルを無傷のまま回収できる。

② 意匠:特注からモジュール化への転換

パネルサイズを案件ごとの特注から、業界標準の規格寸法へ統一する。たとえば「幅2m×長さ6m」のような規格サイズを基本単位とし、設計者はその組み合わせで空間を構成する。

切り欠きや配管用スリーブは最小限に抑え、配管はパネル外側(二重床や現し天井下)を通すルールを徹底することで、パネルの汎用性を維持できる。

③ IT:BIM×建物OSによる「マテリアル・パスポート」

CLTパネル1枚ごとにデジタルな身分証明書を持たせる仕組みだ。

記録データ取得・管理方法再利用時のメリット
生産履歴(樹種・強度・産地)RFIDタグ/QRコード埋め込み品質保証、地域産材の証明
使用履歴(応力・含水率の推移)内蔵IoTセンサー×BIM連携内部腐朽・疲労がないことの構造的証明
メンテナンス履歴(耐火被覆等)建物OS上のデジタルログ再加工要否の判断

④ 加工:リマニュファクチャリング(再製造)ルート

回収したCLTを地域の製材所と連携し、新品同様の状態に再生する仕組みだ。表面の日焼けや小傷、燃え代設計でわずかに炭化した部分を、5〜10mm程度カンナ掛け(プレーナー加工)することで木目を復活させる。CLTは層構造のため、表面層を削っても、コア層の構造耐力は計算上維持できる。


ビジネスモデルの転換:「買い切り」から「サブスクリプション」へ

技術的な再利用が可能になると、建材の調達モデルそのものが変わる可能性がある。

従来、施主はCLTを買い切りで調達していた。再利用システムが確立すれば、リース会社やゼネコンから「CLTパネルを一定期間リースする」という選択肢が生まれる。

  • 施主側のメリット: 初期建築コストの圧縮、解体・回収費用の低減(または相殺)
  • リース側のメリット: パネルが資産として残存し、次の現場へ転用することで継続的な収益を生む。炭素の長期固定によるESG投資やJ-クレジットの恩恵も期待できる

このスキームの実現には、地場の鉄工所、製材所、BIMを扱う設計事務所による地域アライアンスが前提条件となる。


おわりに

CLTを単発の建材として消費するのではなく、複数の建築を渡り歩く資産として設計する──この発想転換は、今後の木造建築における重要な分岐点になると考えられる。

実装にあたっての具体的な接合金物の選定基準や、地域アライアンスの組み方については、専門メディア「木造建築2.0」(Substack)で継続的に発信している。

▶ 連載「木造建築2.0」を読む:https://phitouc.substack.com/

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