能「松風」を読む 謡音読会 小早川修 九段修声会

月光に照らされ汐を汲む人影は、愛しい人を待ち続けた、女の魂であった。

能「松風」を読む

2019年9月15日 @九段生涯学習館
講師:小早川修 (シテ方観世流)

世阿弥の名曲 能「松風」

松風まつかぜ
月光に照らされ汐を汲む人影は、愛しい人を待ち続けた、姉妹の魂であった。何百年もの時を超えて燃えつづける、海女の恋の情念。

在原行平

須磨の浦に追放された行平は、海女の松風・村雨と出会い、愛し合う。

許され都に戻る行平は、小倉百人一首で有名な 

たち別れいなばの山の峰に生ふる まっとし聞かばいま帰り来む

の歌を詠み、自らの烏帽子、狩衣を須磨の海岸の松の木に掛け、姉妹への形見とする。

松島、村雨と遊ぶ行平

 

舞台となる須磨の松風村雨堂

松風は名曲

松風は世阿弥の作品で、江戸時代から「熊野松風は米の飯」といわれ熊野と並び称される人気曲。

在原行平は弟の業平とともに源氏物語の光源氏のモデルと言われる。

源氏物語には、行平を思わせる須磨の巻がある。

能の進行で中入りはないが、囃子は途中で床几から下りる。

終盤、松風は行平の形見の烏帽子と狩衣をまとい、海辺に立つ松を自分に見立てて狂舞する。村雨は姉を咎めつつも、共に行平への愛慕の情に駆られてしまう。

まとめ

狂舞する姉を見る冷静な村雨がいて、恋する哀しさがいっそう増す。

本公演

10月19日に先生は、松風を演じられる。

その下見に松風の舞台となった、兵庫県須磨の浦に向かわれた。

須磨の浦で満月に照らされながら、村雨と松風が汐引車を引く姿を思い浮かべられているのかしら。