能「草紙洗小町-空想の王朝物語」の魅力を探る・銕仙会講座

2019年4月26日 銕仙会能楽研修所@青山

清水寛二のあいさつのあと、資料を用いて大谷節子(成城大学)が解説。

「草紙洗小町」のコードを解くー空想の王朝物語―大谷節子

講演内容

「草紙洗小町」は、祝言性が満ちている。華やかな宮中の歌合せの席。柿本人麻呂を歌神として崇め、その画像を前にした歌会の様子。

しかし過去の評論家によると「草紙洗小町」は稚拙で荒唐無稽な作品であるとし、不当に低い評価が定着している。

「草紙洗小町」は和歌は人を和するものであるという理念を、表現した傑作である。それは、次の理由による。

  • 「草紙洗小町」で主題となる歌合せでのもめごと(盗作)は、平安時代の文献に散見されるあり得る話で、荒唐無稽ではない。
  • 小野小町は、歌の3神(柿本人麻呂、山部赤人、そとおり姫)のそとおり姫の流とされている。(古今和歌集仮名序)
  • 大伴黒主は、猿丸太夫の孫で、その歌は卑しいと記されている。(古今和歌集仮名序)
  • 「草紙洗小町」の小町の歌は、その時代背景ではよくできている。

質疑応答

Q:当時、万葉集は読めていたのか?

A:公家は読めた。一般の人は、印刷技術が発達していなかったので読めなかった。草子洗小町の作者は、万葉集、古今和歌集に通じており、公家の可能性が高い。

Q:文献に書かれている、「1か月の前半15日を万葉集、後半15日を古今和歌集を読む」とあるが、実際に読んでいたのか?

A:和歌の伝統を引き継ぐことが大事だという理念を表現していて、実際にそうしていたかは分からない。

Q:歌の神は住吉天神ではないのか?

A:能「高砂」にあるように、基本、住吉天神が歌神である。柿本人麻呂も歌の神として合体したが、そういうことはよくある。

実技ー和歌と祝言の関係ー

舞囃子 志賀 観世銕之丞

洗い草紙小町では悪役の黒主を、神のように取り扱った能「志賀」。

いざや今日は…から。速いテンポの祝言の舞。

アシライ:鵜沢光

草子洗小町を再評価した講義と、過去の評価に引きづられた実技の演目の組み合わせ。構成の理念はどうなっているのだろう。

本公演 5月10日(金)18:30- 宝生能楽堂

能 草子洗小町(そうしあらいこまち)

シテ 小野小町 浅見 真州
ツレ 紀貫之 清水 寛二
壬生忠岑 泉 雅一郎
河内躬恒 小早川泰輝
官女 鵜澤  光
観世 淳夫
子方 天皇 谷本 康介
ワキ 大伴黒主 福王 和幸
アイ 黒主ノ下人 内藤  連
     
 
小鼓
大鼓
松田 弘之 
曾和 正博 
國川  純
     
地謡 谷本 健吾
長山 桂三
北浪 貴裕
馬野 正基
鵜澤  久 
西村 高夫 
浅井 文義 
小早川 修
     
  後見 観世銕之丞
  浅見 慈一

内裏での歌合で小野小町と争うことになった大伴黒主。詠歌では小町に勝てそうにない黒主は、歌合の前日に小町の私宅へ忍び入り、盗み聞いた歌を万葉の草子に密かに書き入れる。

歌合当日、小町の歌が披露され、その出来が称賛されるなか、黒主は小町の詠んだ歌は古歌であると抗議し、証拠にその歌が書かれた草子を差し出す。万葉の歌に精通している小町は困惑するも、草子をよくよく見るとそこだけ墨つきが違うことに気が付き…。

和歌の徳がめでたく、華やかに描かれる能










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