鉄スクラップから自動車を生産する政策の転換~電炉業界再編

安くて品質の良い電炉鋼がなぜ日本で停滞しているのか?解決策を探る!

スクラップ材の品質は劣る?

鉄のスクラップ材の品質は劣るという風評があります。
実際は、スクラップ(くず鉄)から電炉で作られる鋼材は、鉄鉱石から高炉で作られる鋼材と品質は同じです。

東京製鐵HPより

電炉鋼は鉄筋の98%を占める

ビルの建設に用いられている鉄筋(小型棒鋼)の98%は、電炉鋼です。

H型鋼の50%は電炉鋼です。これは電炉鋼の方がコストが安いからです。

普通鋼熱間圧延鋼材生産に占める普通鋼電炉会社の生産量(2016年度)  出所:鉄鋼・非鉄金属・金属製品統計月報

 

電炉鋼はリサイクルで安い

電炉鋼の材料であるスクラップ(くず鉄)は、廃棄物として発生しますが、電炉によってリサイクルすることによって鋼材に生まれ変わります。リサイクルは環境にやさしく、製造工程でも2酸化炭素の排出量は、高炉の半分以下です。

米国は電炉鋼が67%で圧倒的に大きいシェアをきずいています。米国では、電炉メーカーは大手5社に集約されて、建設用だけでなく自動車の鋼板も製造しています。

中国では、鉄スクラップのストックが大量に発生しました。これを受けて政府主導で高炉から電炉へシフトしています。

日本の電炉のシェアが22%なのは、異様に低くみえます。

【世界・主要国の粗鋼生産に占める電炉鋼比率の推移】普通鋼電炉工業会HP

なぜ日本でシェアが低い

日本で電炉メーカーのシェアが低いのは、電炉メーカーが高炉メーカーに比べて企業規模が小さいので、大規模な設備投資ができないからです。

高炉メーカーは、戦後の高度経済成長を支えた国の基幹産業でしたが、高炉による製鐵に固執しています。

国は大企業である高炉メーカーに忖度して、高炉から電炉への世界的な流れを静観しています。

国がとるべき施策

小規模で分散している電炉メーカーの再編を促す

建設用の厚板材、自動車用の高性能鋼板など需要の大きい製品を製造するため、大規模な工場が必要です。現在の規模では大規模な設備投資に手が届かず、ニッチな製品しか製造できずシェアは伸びません。

高炉メーカーのように企業併合して、競争力のある生産体制を構築する必要があります。

 

電炉メーカーに対して電力料金を優遇する。

電炉では電気を大量に消費するので、電炉メーカーは料金の安い深夜電力を利用して製造してます。

電炉は、さらなるコストダウンを促して、国際競争力を上げる効果があります。

鉄スクラップ市場を安定させる

鉄スクラップ価格は市場に左右され変動します。国際価格が高騰すると、外国に売った方が手っ取り早く現金化できるので、鉄スクラップを外国に輸出してしまいます。
安定的に電炉生産ができる環境を整えるために、鉄スクラップを無闇に輸出しないで国内で一定のストックをするように規制する必要があります。

海外進出を後押しする

国内の少子高齢化により、鉄についても建設・自動車の需要の逼迫から生産を頭打ちになります。今後需要が見込める東南アジアなど国外に、電炉工場を建設する動きを後押しする必要があります。

まとめ

世界的潮流である、製鐵産業の高炉から電炉への転換を国は後押しする必要がある。

安い電炉鋼が市場に普及すれば、輸出産業としてだけでなく建設業、自動車産業にとってプラスとなり内需拡大に寄与する。