
10月4日に高市早苗氏が自民党の新総裁に選出されてから、わずか5日。この短期間に、保守層を中心に「偏向的だ」「敵対的ではないか」と批判されるメディア報道が相次いでいます。就任直後の新リーダーに対する厳しい視線は、健全な権力監視の一環として当然のことかもしれません。
しかし、今回の一連の報道は、単なる厳格な検証なのでしょうか。それとも、特定の意図を持った選択的、かつネガティブな切り取りが行われているのでしょうか。本記事では、高市新総裁の就任から最初の1週間に見られた報道の中から、特に象徴的な4つの事例を分析し、その背景にある「報道の異様さ」の本質を読み解いていきます。
目次
「支持率下げてやる」— 報道陣から漏れた、メディアの敵対心を象徴する一言
10月8日、高市総裁の記者会見が始まる前、会場で待機していた報道陣のマイクが、ある衝撃的な一言を拾いました。生配信されていた映像を通じて、その声はインターネット上に拡散されることになります。
支持率下げてやる
この発言は、ライブ配信を見ていた視聴者によって即座に特定され、X(旧Twitter)上で瞬く間に炎上。「メディアの傲慢」「オールドメディアの終わり」といったハッシュタグと共に、メディアに対する不信感を表明する投稿が急増しました。
この一件は、これまで憶測の域を出なかったメディアの姿勢が、解釈の余地なく露呈した瞬間でした。単なる批判的な報道ではなく、明確な意図を持って「支持率を下げる」ことを目的とするかのような内部の声が漏れ伝わったことは、メディアの敵対心を示す最も直接的な証拠として受け止められています。その偏向度は「非常に高め」と判断せざるを得ないでしょう。
「傷もの」発言報道 — 小さな失言をセンセーショナルに切り取る「言葉狩り」
同じく10月8日、高市総裁が野党挨拶回りの一環で立憲民主党の野田佳彦代表と会談した際、一つの「失言」が報じられました。高市氏は、裏金問題で不記載の過去があった萩生田光一氏を「傷もの」と表現。この発言を野田氏が記者団に漏らしたことで、Yahooニュースはこれを即座にトップ記事として大々的に報じました。
報道は野田氏の「驚いた」というコメントを強調し、あたかも高市氏が重大な失言を犯したかのような印象を与える構成になっていました。この記事に対し、SNS上では「言葉狩りだ」「就任直後にわざわざネガティブなイメージを植え付けようとしている」といった批判が噴出しました。
報道された内容は事実ではありますが、就任直後の挨拶回りという文脈の中で、この小さなエピソードだけを切り取り、センセーショナルな見出しで拡散させる手法は、明らかにイメージダウンを狙ったものと見なされています。事実を報じながらも、その選択と強調の仕方によって特定の印象を植え付けるこの手法は、偏向度が「高め」と評価される典型例と言えます。
田﨑史郎氏の「予想外れ」— 世論を誘導しようとしたコメンテーターの誤算
総裁選の期間中、政治ジャーナリストの田﨑史郎氏はテレビ番組に繰り返し出演し、小泉進次郎氏の勝利を予想する一方で、高市氏の保守的な政策を「極端」と評し、批判的な論調を展開しました。しかし、結果は高市氏の勝利。田﨑氏の「予想外れ」はXでトレンド入りし、同氏は立て続けに謝罪に追い込まれる事態となりました。
この一連の動きに対し、元自民党議員の金子恵美氏は「報道が世論を誘導、扇動しすぎている」と苦言を呈しました。
世論を誘導、扇動しすぎ
一人のコメンテーターの主観的な意見が外れること自体は問題ではありません。しかし、複数の主要メディアで同様の「小泉有利」の論調が並行して展開されたことは、単なる予想ではなく、世論を一定の方向に導こうとする意図があったのではないかとの疑念を抱かせました。この種の報道は、コメンテーターの主観ではあるものの、世論誘導の疑いがあるとして偏向度は「中程度」と評価されています。
靖国参拝「見送り」報道 — 保守派の失望を煽る「ギャップ」の強調
10月7日から8日にかけて、高市総裁が秋季例大祭での靖国神社参拝を見送る方向で調整している、と報じられました。その理由として、中国や韓国からの反発を避けるための外交的配慮が挙げられています。
メディア各社は、この判断を「これまで強硬な発言を続けてきた高市氏の変化」として報道。過去の発言との「ギャップ」を強調し、彼女の支持基盤である保守層の失望を煽るかのような論調が目立ちました。高市氏が安全保障政策について発信したポジティブな側面などが報じられない一方で、この一件は「弱腰」「支持者への裏切り」といったネガティブなイメージを植え付けるために選択的に利用されたのです。
これは、より巧妙な形の偏向報道です。現実的な外交判断を、意図的に「理念の揺らぎ」や「弱さ」として描き出すことで、支持層の分断を狙い、政権のイメージを毀損しようとする意図が透けて見えます。このような、就任直後の判断をネガティブに焦点化する手法も、偏向度は「中程度」と見なされています。
まとめ
今回取り上げた4つの事例は、高市新総裁の就任からわずか数日の間に見られた報道の傾向を象徴しています。失言や方針転換といったネガティブなエピソードを優先的に取り上げ、事実をネガティブなトーンで報じ、支持層の分断を煽る。この一貫したパターンは、偶然とは考えにくいものです。
分析元の調査によれば、X上では「高市氏の直接発信を信じる」という声が9割以上を占め、旧来のメディアに対する不信感が急速に加速していることが示されています。リーダーがSNSを通じて国民と直接コミュニケーションを取れる時代において、メディアがかつて持っていた「支持率を下げる」力は、もはや絶対的なものではなくなっているのかもしれません。
このメディアと新政権の対立構造は、今後さらに激化するのか。それとも、国民のメディアリテラシーの高まりによって、伝統的なメディアの「物語」を形成する力は徐々にその影響力を失っていくのか。この攻防は、日本の政治と報道の未来を占う上で、重要な試金石となるでしょう。