「弱法師」野村四郎「巻絹」小早川修 銕仙会定期公演

宝生能楽堂 2018年2月9日(金)

狂言「地蔵舞」石田幸雄

「弱法師 盲目之舞」野村四郎

シテは、人間国宝の野村四郎。

満席で期待がふくらむ。寂しげな少年が登場。しっかりとした台詞回し。

盲目之舞は見ごたえがあった。地頭、片山九朗右衛門の名補佐。

シテ 俊徳丸  野村 四郎
ワキ 高安通俊  殿田 謙吉
アイ 通俊ノ下人  高野 和憲

笛  一噌 隆之
小鼓  幸 清次郎
大鼓  國川  純

地謡
小早川泰輝  鵜澤久 観世淳夫  西村高夫
谷本健吾  片山九郎右衛門 浅見慈一  柴田稔

後見
観世銕之丞 長山禮三郎

河内国高安の通俊は、人の讒言を信じ我が子俊徳丸を追放した。その罪滅ぼしのために、天王寺で七日間の施行をしていると、そこへ盲目の乞食となった俊徳丸が現れる。俊徳丸は知らぬままに父の施行を受け、仏を讃えて天王寺の由来を語る。やがて日想観(夕日を見て極楽浄土を思い描く修行)の時刻。俊徳丸の心眼にはかつて慣れ親しんだ、難波の浦の景色が鮮やかに浮かび上がる。やがて父子は名のりあい、高安の里に帰ってゆくのであった。

袖に散る梅花に心を寄せ、その香を愛でる盲目の少年。哀しく残酷な中に清らかな心象風景が美しい能。

「巻絹」 小早川修

シテは小早川修。スラリとした巫女の神楽に酔いしれた。桜井均の太鼓が入り、舞台がいっそう引き締まり、舞と楽が一体となる。

能 巻絹 まきぎぬ 出端之伝

シテ 巫女  小早川修
ツレ 都ノ男  馬野正基
ワキ 臣下  工藤和哉
アイ 下人  野村太一郎

笛  杉信太朗
小鼓  鳥山直也
大鼓  原岡一之
太鼓  桜井 均

地謡
鵜澤光 安藤貴康 長山桂三 北浪貴裕
浅見慈一 浅井文義 浅見真州 泉雅一郎

後見
清水寛二 観世淳夫

帝の命令で、諸国より千疋の巻絹(絹の反物)が熊野権現に奉納されるなか、都からの奉納分が遅れている。巻絹を奉る都の男は、旅の途中に詣でた音無天神で薫る冬梅に惹かれ、心中に和歌を手向けていた。そうして期日に遅れた男は臣下に咎められ、縄で縛られてしまう。そこへ音無明神が憑いた巫女が現れ、男の罪を赦すよう告げる。神憑りの巫女は和歌の功徳を説き、祝詞を捧げて神楽を舞い、やがて神は巫女の身体を離れ、正気に戻るのであった。

山深い熊野を舞台に物語を和歌世界で繋ぐ神秘な能。