能 楊貴妃 としま能の会シテ 観世喜正







第32回としま能の会

7月15日(月曜) 15時
会場 東京芸術劇場プレイハウス

2階がプレイハウス

主催者挨拶

豊島区は2019年の東アジア文化都市として文化庁から選定された。様々なイベントを西安市、仁川市と開催している。日本では前年まで奈良市、京都市、金沢市と続いてきた。

楊貴妃もその企画の中で、共同開催都市である西安を題材とした作品として選んだ。

この能は最初は屋外で開催していたが、20年前から東京芸術劇場に会場を移し、雨の心配がなくなった。

楊貴妃の解説 観世喜正

楊貴妃は今までのようにテンポが速くなく、ゆっくりした作品です。眠たくなるかもしれません。

宝生流 仕舞

「天鼓(てんこ)」/朝倉俊樹

和泉流 狂言

「二人袴(ふたりばかま)」/野村 萬・野村万蔵

能 楊貴妃 (ようきひ)

入り口で配られたパンフレットに台詞の全文が大きめの文字で載せられていた
上演中に照明も適度にあり、内容が良くわかってありがたい心遣いだった。

作品

愛しあう玄宗皇帝と死別し、神仙郷の蓬莱山で過ごす、楊貴妃の魂。愛する夫との秘密の約束を語り、羽衣の曲を舞う。

作者 金春禅竹

登場人物(3名)
シテ 楊貴妃の魂  観世喜正 ・・・面:若女 天冠壺折大口出立
ワキ 方士 殿田謙吉 ・・・・道教の術を使う霊能者
間狂言 蓬莱国の者  能村晶人・・・・唐人の扮装

開演前

中央に赤い布に覆われた造り物が台座の上に載っている。中には楊貴妃が座っているが、はじめは見えない。

呪術師が蓬莱宮で楊貴妃に合う

亡くなった楊貴妃の魂の行方を尋ねよという玄宗皇帝の命令を受けた呪術師が仙郷・蓬莱山に至る。

間狂言

唐人の扮装をした者が、呪術師を楊貴妃の住む太真殿に案内する。

楊貴妃登場

幕が取り除かれ、中から金色の着物をまとった楊貴妃が登場。

皇帝と交わした愛の告白

玄宗の言葉を伝えた方士が、貴妃に出会ったという証拠を所望するので、貴妃は自分のかんざしを与えるが、それでは確かな証拠にならないと方士は言い、玄宗と貴妃とが生前に言い交わした秘密の約束を教えてほしいと言う。貴妃は、「比翼の鳥、連理の枝」と告げる。

楊貴妃、序の舞

二人だけの秘密の言葉を教えると、帰ろうとする方士を呼び返し、かつて宮廷の遊宴で舞った舞を見せようと言う。貴妃は玄宗との思い出を語り、かんざしを頭上に挿し、優雅に「藝勝羽衣」の曲を舞う。

台留(うてなどめ)

やがて方士は帰ってゆくので、貴妃はかんざしを与えて見送くる。そのまま台に腰かけて涙に伏し沈む。

楊貴妃を観ての感想

作品を鑑賞して、仏教色がないことが発見だった。多くの能作品は神仏習合であるのに対し、楊貴妃はストレートで神のみだ。中国が題材でもあるのにかかわらず、見終わったあとの清々しさが感じられた。

楊貴妃は、人間らしくなく神の生まれ変わりである様を、シテが見事に演じていたからかもしれない。

この作品ができる頃は、仏教が中国でさほど浸透しておらず、楊貴妃は中国から輸入された、日本の神のあり方に近いと推測した。

長恨歌 白居易

楊貴妃は白居易の長恨歌を基にしている。
白居易の長恨歌は、平安時代に日本でも話題となり、よく読まれた。

京劇 by史依弘

全文を以下に記す。

漢皇重色思傾国
御宇多年求不得
楊家有女初長成
養在深閨人未識
天生麗質難自棄
一朝選在君王側
迴眸一笑百媚生
六宮粉黛無顔色

 

春寒賜浴華清池
温泉水滑洗凝脂
侍児扶起嬌無力
始是新承恩沢時
雲鬢花顔金歩揺
芙蓉帳暖度春宵
春宵苦短日高起
従此君王不早朝

 

承歓侍宴無閑暇
春従春遊夜専夜
後宮佳麗三千人
三千寵愛在一身
金屋粧成嬌侍夜
玉楼宴罷酔和春
姉妹弟兄皆列土
可憐光彩生門戸

遂令天下父母心
不重生男重生女
驪宮高処入青雲
仙楽風飄処処聞
緩歌慢舞凝糸竹
尽日君王看不足
漁陽鞞鼓動地来
驚破霓裳羽衣曲

九重城闕煙塵生
千乗万騎西南行
翠華揺揺行復止
西出都門百余里
六軍不発無奈何
宛転蛾眉馬前死
花鈿委地無人収
翠翹金雀玉搔頭

君王掩面救不得
迴看血涙相和流
黄埃散漫風蕭索
雲桟縈紆登剣閣
峨眉山下少人行
旌旗無光日色薄
蜀江水碧蜀山青
聖主朝朝暮暮情

行宮見月傷心色
夜雨聞鈴腸断声
天旋日転迴竜馭
到此躊躇不能去
馬嵬坡下泥土中
不見玉顔空死処
君臣相顧尽霑衣
東望都門信馬帰

記録

2018年の「としま能の会」は「能楽」の魅力を発見!

6月24日(日曜) 15時30分開演(15時開場)
会場 東京芸術劇場プレイハウス
悲しみに舞う静御前、襲い掛かる平知盛の亡霊。英雄・源義経の悲運を“静”と“荒”で織りなすスペクタクル―能『船弁慶』を中心に、能楽ファンも初めての方も、体感するほどに新しい「能楽」の世界へ誘います。

演目解説 観世喜正

宝生流 仕舞 『忠度』(ただのり)/水上 優
和泉流 狂言 『舟渡聟』(ふなわたしむこ)/野村 萬・野村万之丞
観世流 能 『船弁慶』(ふなべんけい)/観世喜正・野村万蔵

2017年の「としま能の会」は妖怪たちに出会う!

4月30日(日曜) 15時30分開演(15時開場)
会場 東京芸術劇場プレイハウス

土蜘蛛(妖怪ではなく、日本の先住民)が跋扈する。

演目解説 観世喜正

宝生流 仕舞 『鵺』(ぬえ)/亀井雄二
和泉流 狂言 『茸』(くさびら)/野村万蔵・野村 萬
観世流 能 『土蜘蛛』(つちぐも)/観世喜正