観世会能楽講座「鸚鵡小町」 ゲスト馬場あき子

観世秋の別会で演じられる鸚鵡小町の事前講座

宗家 観世清和のあいさつ

8月に開催した「はじめて能」、「親子教室」は盛況だった。

8月は休暇を取ったが、休み明けに大作2曲を控えているので、旅行中に謡本を持参したが、周りの雰囲気を壊すので、途中から封印した。

オリパラ期間中に文化的な催しが義務付けられている。7月24日から銀座通りは連日歩行者天国となる。観世会は東映とタイアップして銀座6~2丁目で、外国人向けにイベントを企画している。

イヤフォンガイドには抵抗があるが、パナソニックは観劇しているとき隣の席の人と友達になれる、初心者向けのツールを開発している。

今日のゲストは馬場あき子さんは、パワフルで分かりやすい説明をする。自ら能を舞われて、観世研修会の講師でもある。

馬場あき子

家元の紹介通り、91才と思えぬパワフルな語り口で、鸚鵡小町を説明した。

鸚鵡小町は老女物で、空海が書いたともいわれる玉造小町壮衰書のように、花がしおれる生の無常を演じている。

小野小町の性格は闊達、気が良い、情けがある、あと腐れが残らない人物。美人と呼ばれるのに後ろ姿しか描かれていない。美人と呼ばれたのは、顔でなく性格や声が良かったからではないか。

小野小町は仁明天皇の後宮だった。能では100才となっているが、陽成天皇からの勅使が登場するが、計算すると75~85才のはずだ。
陽成天皇は狂王と呼ばれ、小町も物狂いとされているので、史実とは異なる組み合わせになったか?

小町の装束は、唐織壺折だが立派すぎる。この時代は12単衣の前、資料がなく何を着ていたかブラックボックス。

実演 素謡

地謡8名(シテ観世清和)の素謡。

「この歌の様を申すなり~身體痺じゅつする小町ぞあはれなりける」

ゲストのリクエスト

「玉津島に来たりつつ~波かへり」

舞いがないのはサビしかった。

鼎談

家元:鸚鵡小町は音楽的な面が強い。

変身もせず単純なストーリーで面白くないように見えるが、奥が深く謎が多い。

鸚鵡小町は、銕之丞家が分家するときの、宗家から相伝してプレゼントした曲の一つ。ほかに望月、近江が相伝された。銕之丞家は、今でもこの3曲を大事にしている。

馬場:喜多流は鸚鵡小町から入る。

家元:次回の講座は2020年2-3月公演に関して、1月か12月に開催。

自己陶酔にならないように、演目と役者をラインアップする。

鸚鵡小町

美人で有名な歌人小野小町を主役とする能。
 
「草紙洗小町」「通小町」「鸚鵡小町」「関寺小町」「卒都婆小町」のうち、「鸚鵡小町」は「関寺小町」「卒都婆小町」と共に老女となった小野小町が主題となる。
 
3老女物「関寺小町」「檜垣」「姨捨に次ぐ曲としても、重く扱われる。
観世華雪(1884-1954)が、謡曲としてのみ残り、江戸時代に能として演じられていなかった鸚鵡小町を復活させた。
そのため「観世流100番集」には謡のみ掲載され、舞の装束、図の説明は無い。
 

あらすじ

小野小町が住む関寺に、陽成院からの勅使が訪れる。

帝からの憐みの歌、

雲の上はありし昔に変らねど見し玉簾(たまだれ)の内ゆかしき

を聴かされ、返歌を求められる。

関寺(滋賀県)

小町は、「内ゆかしき」と一字をかえるだけの鸚鵡返しをして応える。

勅使は小町から鸚鵡返しをした訳を聞き、今だ衰えぬ才気を感じ、さらに小町に舞を所望する。

百歳になる小町は人に物を乞う悲惨な生活をしていて、周りからは物狂いと言われても、かつての活躍を髣髴させるきらびやな才能を今でも持ち続けていた。

 

公演予定 10月6日@観世能楽堂

次回講座「阿古屋松」