日本の食料自給率38%の「ウソとホント」。米以外で日本を支える意外なカロリー源トップ5

日本のカロリーベース食料自給率は約38%

日本のカロリーベース食料自給率が約38%であることは、広く知られています。この数字を聞いて多くの人が思い浮かべるのは、主食である「米」でしょう。

しかし、ここで一つの疑問が浮かびます。「米が国内生産の柱であることは間違いないが、では、私たちが国内で生産しているカロリーの“残り”は何で構成されているのか?日本の食料システムを陰で支える、知られざる主役は何なのだろうか?」

この記事では、農林水産省のデータを基に、米以外で日本人のカロリーを支えている食品に関する5つの意外な真実を明らかにします。

1. 「自給率100%」の卵、その意外なカラクリ

まず驚くべき事実は、卵の自給率が約100%であり、国内生産の優等生のように見えることです。

しかし、そこには重大なニュアンスが隠されています。鶏卵そのものは国内で生産されていますが、その鶏が食べる飼料は、ほぼすべてが輸入品なのです。この依存関係を考慮すると、生産チェーン全体で見た「真の」自給率ははるかに低いと言えます。

これは、日本の食料システムが抱える中心的な矛盾を浮き彫りにします。品目レベルでの高い自給率を達成する一方で、システムレベルでの国際的な依存を深めているという現実です。同様の課題は、豚肉や鶏肉、牛乳・乳製品にも共通しています。

2. 主役はパンでも麺でもない。カロリー源の隠れた王者「いも類」

米に次いで、国内で生産されるカロリー源として2番目に重要な位置を占めるのは、「いも類」です。その中心はじゃがいも(自給率約70%)とさつまいも(同約80%)で、さといも(同約90%)なども含め、高い水準を維持しています。

米を除いた国内生産カロリー(年間約19.4兆kcal)のうち、いも類は約20%(約3.9兆kcal)を占めており、これは非常に大きな割合です。この事実は、普段見過ごされがちな、日本の国内食料供給における「隠れた強靭性(レジリエンス)」を明らかにしています。

じゃがいもやさつまいもはエネルギー量が多く、保存性も高いため、戦時や災害時の代替食としても価値が高い。

多くの人が米の次に主食のイメージがある小麦製品を想像するかもしれませんが、実際には、いも類が日本の国内食料生産において、はるかに大きなカロリー上の役割を担っているのです。

3. 食卓に不可欠な「大豆」、実はほとんどが輸入品という現実

豆腐、味噌、納豆など、日本の食卓に欠かせない大豆。その中心的な役割とは裏腹に、そのほとんどが輸入品であるという厳しい現実があります。

日本の大豆自給率は、わずか6〜7%程度です。

これは、伝統的な和食に不可欠な大豆の大部分を輸入に頼っていることを意味します。国内生産の強化は、長年の政策課題となっています。

4. 国産カロリーの半分以上は「米」という圧倒的な事実

「米以外」の品目の規模を理解するために、まず「米」がいかに絶大な存在であるかを確認しておく必要があります。日本の総カロリーベース自給率約38%のうち、米だけで約20パーセントポイントを占めています。

この割合を年間の総カロリー量に換算すると、次のようになります。国内で生産される総カロリー約40.9兆kcalのうち、米が供給するのは約21.5兆kcalです。

つまり、米は国内で生産される全カロリーの半分以上を単独で供給しており、この事実が、この記事で取り上げている他のすべての品目の重要性を相対的に測る上での基準となります。

5. 「米以外」の国産カロリーは年間19.4兆kcal。その主役たち

では、米を除いた国内生産の食料は、年間でどれくらいのカロリーを供給しているのでしょうか。その総量は、約19.4兆kcalにのぼります。

この19.4兆kcalを構成する主役たちは以下の通りです。

  • 畜産物(卵、牛乳、肉): 約40% (約7.8兆kcal)
  • いも類(じゃがいも、さつまいも等): 約20% (約3.9兆kcal)
  • 野菜・果実: 約15% (約2.9兆kcal)
  • 豆類: 約10% (約1.9兆kcal)
  • その他(砂糖原料、油脂など): 約10% (約1.9兆kcal)
  • 麦類: 約5% (約1.0兆kcal)

この内訳を見ると、「畜産物」「いも類」「野菜・果実」の3分野だけで、米以外の国産カロリーの約75%を占めていることがわかります。日本の食料生産が、米を除けば、いかに特定の品目に集中しているかが明確です。

まとめ

食料自給率38%という数字の裏側には、「隠れた脆弱性」と「隠れた強み」という二つの側面が共存しています。

一つは、「自給率100%」の卵でさえ飼料輸入に依存するという脆弱性。もう一つは、パンや麺ではなく「いも類」が災害時にも頼りになるカロリー源として、私たちの食料安全保障を静かに支えているという強みです。

私たちの食料システムのこの複雑な現実を知った上で、明日の食卓に並ぶ食べ物を、あなたはどのように見るでしょうか?